クロモ(Hydrilla verticillata)は、一般にウォータータイムやインディアン・スターバインとして知られ、トチリソウ科に属する沈水性水生植物です。世界で最も広く分布し、生態学的に重要な淡水産大型水生植物の一つであり、極めて効率的な供酸素植物であると同時に、世界的に最も侵略的な外来水生種の一つとしても有名です。
• 淡水からわずかに塩分を含む水域まで生育可能な多年生の沈水性草本
• 水面に密生し、ほとんど侵入不可能なマット状の群落を形成する能力を持つ
• 驚異的な成長速度で知られ、最適条件下では茎が 1 日あたり最大 2.5 cm も伸長する
• 近縁のオオカナダモ属(Elodea、カナダモなど)と混同されることが多いが、葉縁に鋸歯があり、泥中に塊茎を形成することで識別可能
• 本来の分布域には、南アジアおよび東南アジアの地域、中央アフリカの一部、ならびにオーストラリア北部が含まれる
• インドで収集された標本に基づき、科学的に初めて記載された
• 1950 年代または 1960 年代に、おそらく観賞魚貿易を通じてアメリカ合衆国に導入された
• その後、アメリカ合衆国南部および東部で侵略的に拡がり、北米において最も問題のある侵略的外来水生雑草の一つとなった
• 現在では南極大陸を除くすべての大陸で確認されている
茎:
• 細く分枝する茎は通常 1〜3 メートルに達し(深い水中ではまれに 9 メートルに及ぶこともある)
• 急速に成長し、水面またはその直下に密生したマット状の群落を形成する
• 非常に断片化しやすく、小さな茎の断片からでも完全に新しい個体が再生する
葉:
• 茎の周りに 3〜8 枚(通常は 4〜5 枚)が輪生して付く
• 小型で披針形〜狭長楕円形、長さ 6〜20 mm、幅 1〜4 mm
• 葉縁には明瞭な鋸歯(歯状の突起)があり、同定の重要な特徴となる
• 葉の裏側の主脈に小さな棘や歯を持つことがある
• 鮮緑色〜濃緑色で、時に赤みを帯びる
根および地下茎:
• 根は不定根で、茎の節から出て植物体を基質に固定する
• 基質中に地下塊茎(冬芽)を形成し、越冬や長期的な生存に不可欠
• 塊茎はジャガイモに似て直径 5〜10 mm で、泥中で数年間も生存能力を保つ
• また、茎の腋芽にも冬芽(腋生冬芽)を形成する
花:
• 雌雄異株。雄花と雌花は別の個体に付く(導入された集団のほとんどでは雌株のみが存在する)
• 雌花は微小で単生し、3 枚の半透明の白色のがくと 3 枚の花弁を持ち、水面に達する糸状の長い花筒(花托筒)の先端に付く
• 雄花はさらに小さく緑色を帯び、水面に浮遊するために離脱するか、あるいは付いたままとなる
• 花は目立たず、多くの集団ではめったに観察されない
生育環境:
• 湖、池、河川、貯水池、運河、用水路、緩やかな流れの小川などに生育
• 浅い岸辺から水深 6 メートルを超える深さまで、幅広い水深に適応する
• 貧栄養水から富栄養水まで生育可能
• 弱光条件にも耐え、多くの競争相手種が光合成できないような低照度下でも光合成を行う
• わずかな塩分(約 7 ppt まで)に耐えるため、汽水域にも侵入・定着できる
生育条件:
• 至適生育温度は 20〜30℃
• 冬季は塊茎まで枯死して凍結に耐え、春に再成長する
• 幅広い pH(およそ 5.0〜9.0)に耐える
• 水中および底泥の双方から栄養分を極めて効率的に吸収する
生態系への影響:
• 水面を覆う密生したマットを形成して日光を遮断し、在来の沈水植物の生育を抑制する
• 溶存酸素動態を変化させ、酸素濃度に極端な日内変動を引き起こすことがある
• pH や栄養塩循環など、水質化学的特性を変化させる
• 在来の水生植物群落と、それに依存する野生生物を駆逐する
• 農業用水路や排水系統における水流を阻害する
• 環境によってはボウフラなどの蚊の幼虫の生育場となる
繁殖と分散:
• 主に茎の断片化、塊茎、腋生冬芽による栄養繁殖で増える
• 節を 1 つ持つ茎の断片 1 つからでも新しい個体が再生する
• 塊茎は乾燥、草食動物による摂食、および水鳥の消化管通過にも耐える
• 水流、ボート、ボート用トレーラー、釣り具、水鳥などによって分散する
• 導入された地域(北米など)では、通常片方の性しか存在しないため、有性生殖はまれである
• 密生したクロモのマットは、シアノバクテリアの大発生(ブルーム)に好適なよどみのある微小環境を作り出す
• クロモのマットに付随するシアノバクテリアを含む水との接触や摂取により、皮膚炎、胃腸障害、重症例では肝障害を引き起こす可能性がある
• 一般に水鳥が摂食しても毒性はなく、水鳥はクロモの葉や塊茎を好んで食べる
アクアリウムでの利用(合法な地域において):
• 淡水アクアリウムにおいて供酸素植物として利用可能
• 成長が速く、過剰な栄養塩を吸収して藻類の発生を抑制する効果がある
• 中程度〜強い照明を必要とする
• 好適温度は 18〜28℃
• 茎の挿し木で容易に増殖可能。茎の断片を基質に植え込むだけでよい
法的地位:
• 米国では植物防疫法に基づき連邦指定有害雑草に指定されている
• 米国の多くの州で販売、配布、輸送が違法
• オーストラリア、ニュージーランド、欧州の一部では懸念すべき侵略的外来種に分類されている
• 栽培を検討する際は、地域の規制を必ず確認すること
防除方法:
• 機械的刈り取り・回収:短期的には有効だが、断片が拡がって侵入を助長する恐れがある
• 除草剤の散布(フルリドン、エンドサル、ジクワットなど):大規模管理で最も一般的な手法
• 生物的防除:ソウギョ(Ctenopharyngodon idella)がクロモを摂食する。また、米国では複数の防除用昆虫(例:アジア産のクロモハモグリバエ Hydrellia pakistanae など)が導入されている
• 水位低下(ドライダウン):水位を下げて植物体や塊茎を露出・乾燥させる
• 予防:水域間での断片の移動を防ぐため、ボートや機材を洗浄する
豆知識
クロモ(Hydrilla verticillata)は、宇宙空間で光合成が実証された最初の植物の一つという栄誉に輝いています。ソビエトの宇宙ステーションや、その後の NASA による実験において、閉鎖環境下で酸素を生成し二酸化炭素を除去するバイオ再生型生命維持システムにおける潜在的可能性を評価するため、研究対象となりました。 • クロモは極めて光合成効率が高く、非常に弱い光条件下でも光合成が可能。フルサンのわずか 1% 程度の照度から光合成を開始できる • クロモの塊茎 1 個から、断片化のみで生育期 1 シーズン中に数千個もの新しい個体が生まれることがある • フロリダ州だけでも、クロモの管理に年間数千万ドルもの費用が費やされている • 北米では侵略的外来種として脅威となっている一方、本来の分布域では渡り鳥にとって重要な餌資源となっている。オオハクビタマシギなどの種は、冬季にクロモの塊茎や葉を重要な食物源としている • ほぼ完全な暗闇でも生育可能な能力と、微小な断片から再生する驚異的な能力により、地球上で最も強靭な水生生物の一つとなっている
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