メインコンテンツへ
テフ

テフ

Eragrostis tef

0 0

テフ(Eragrostis tef)は、エチオピア高原とエリトリア原産の細い茎をもつ多年生の穀草で、数千年にわたり主食として栽培されてきました。イネ科に属し、穀物の中で最も小さい粒の一つを生産します。その直径は約 1mm です。

テフは、エチオピア料理およびエリトリア料理の中心であるスポンジ状のサワードウフットブレッド「インジェラ」の主原料です。粒は非常に小さいものの、栄養的には極めて優れており、天然のグルテンフリーで、食物繊維、鉄、カルシウム、タンパク質が豊富で、必須アミノ酸もバランスよく含まれています。

• アフリカで最も早く栽培化された作物の一つであり、栽培の証拠は少なくとも 3,000〜5,000 年前にさかのぼります
• 「テフ」という名前は、アムハラ語の「teffa(失われた)」に由来し、小さすぎてすぐに見失ってしまう種子にちなんでいます
• エチオピアの食事において、1 日あたりのタンパク質摂取量の約 3 分の 2 を占めています
• エチオピアでは毎年約 300 万ヘクタールで栽培されており、作付面積において同国で最も重要な穀物です
• 近年、グルテンフリーの「スーパーフード」として国際的に人気を集めています

分類

Plantae
Tracheophyta
Liliopsida
Poales
Poaceae
Eragrostis
Species Eragrostis tef
テフはエチオピア高原およびアフリカの角(ホーン・オブ・アフリカ)に自生し、野生種である Eragrostis pilosa から栽培化されました。考古学的および植物学的な証拠は、エチオピア高原が発祥の地かつ多様化の中心地であることを示しています。

• 栽培化は紀元前 4,000 年〜紀元前 1,000 年の間に起こったと推定されています
• 野生の祖先種:Eragrostis pilosa(アフリカからアジアにかけて広く分布する雑草性のイネ科植物)
• 歴史的に数千年もの間、ほぼエチオピアとエリトリアに限定して栽培されていました
• テフの種子は交易によってイエメンやインドへともたらされたとされていますが、アフリカの角以外で本格的な栽培が行われるようになったのは 20 世紀後半になってからです
• エチオピアでは、標高 1,800〜2,500 メートルの範囲で栽培されていますが、海面近くから標高 3,000 メートルまで生育可能です
• エチオピア生物多様性研究所は、遺伝子バンクにおいて 5,000 点以上のテフの系統を保存しています
テフはまばらに株立ちし、直立するかやや伏し気味の一年生草本で、通常の高さは 30〜120cm です。

稈(茎):
• 細く、通常 20〜120cm で、節は 2〜5 個
• 直立するか、基部で曲がる膝状上昇型
• しばしば多数の分げつを行い、1 株から複数の茎を出します

葉:
• 葉身は細く線形で、平らかやや内巻きになり、長さ 10〜45cm、幅 1〜5mm
• 葉舌は短い繊毛のある膜状(約 0.5mm)
• 葉鞘は無毛か、わずかに毛があります

花序:
• 円錐花序は開き、まばらで広がり、長さ 10〜50cm
• 枝は細く輪生し、多数の小さな小穂をつけます
• 小穂は長さ 4〜8mm で側扁し、4〜14 個の小花を含みます
• 苞穎は卵形で長さ約 2mm、3 条の脈があります

穀粒(穎果):
• 極めて小さく、長さは約 1.0〜1.5mm、直径は 0.6〜1.0mm
• 重量:1 粒あたり約 0.2〜0.4mg(既知の穀物の中で最小クラス)
• 色は多様で、象牙色・白色、淡褐色、濃褐色、紫がかった褐色などの品種があります
• 千粒重はわずか約 0.2〜0.3g です(小麦は約 40g)

根系:
• 繊維質で比較的浅く、土壌の表層 20〜30cm に集中しています
テフはアフリカの角の半乾燥の高地環境に適応した、温暖期に生育する C4 植物です。

気候:
• 標高 1,800〜2,500m、気温 15〜27℃の温和な環境で最もよく生育します
• 生育期間中に 450〜550mm の降雨量が必要で、通常 3〜4 ヶ月に 걸쳐降ります
• 霜に弱く、長期間の低温には耐えられません
• 日長感受性があり、ほとんどの品種は短日植物です
• 生育期間は比較的短く、播種から収穫まで 60〜120 日です

土壌:
• 壌土、バーティソル(黒色綿土)、砂壌土など多様な土壌に適応します
• 水はけの良い土壌を好みます。冠水に非常に弱いです
• 弱酸性から弱アルカリ性の土壌(pH 5.5〜7.5)に耐えます
• 他の穀物と比較して、塩分に対して中程度の耐性を示します

生態系における役割:
• C4 型光合成を行う植物として、強い日照と高温条件下で炭酸固定効率が非常に高いです
• 浅く繊維状の根系が表土を保持し、エチオピア高原の傾斜地における侵食を軽減する助けになります
• エチオピアの伝統的農業システムでは、マメ科作物(ソラマメ、エンドウなど)との輪作が一般的です
• 収穫後のわらは家畜の飼料として利用され、泥と混ぜて建築用の漆喰としても使われます

繁殖:
• 主に自家受粉(自殖性)で、他家受粉率は一般的に 1〜2% 未満と推定されています
• 野生種における種子の分散は重力と風によりますが、栽培種のテフは完全に人間による播種に依存しています
テフは穀物として極めて栄養価が高く、マクロ栄養素とミクロ栄養素のバランスが取れたプロファイルを提供します。

主要栄養素の組成(調理前のテフ 100g あたりの概算値):
• エネルギー:約 360〜380kcal
• タンパク質:9〜13g(ほとんどの穀物より顕著に多い)
• 炭水化物:70〜76g
• 食物繊維:6〜12g(品種による。全粒粉のテフは優れた繊維源です)
• 脂質:2〜3g

アミノ酸プロファイル:
• 8 種類の必須アミノ酸をすべて含みます
• 他の穀物に比べてリジンが比較的多く(多くの穀物で不足しがちなアミノ酸)、食事中のマメ科植物と補完し合います

主要な微量栄養素(調理前のテフ 100g あたりの概算値):
• 鉄:5〜9mg(鉄を最も豊富に含む穀物の一つで、小麦や米より著しく多い)
• カルシウム:120〜180mg(穀物としては極めて高く、乳製品の一部に匹敵します)
• マグネシウム:170〜190mg
• リン:350〜450mg
• 亜鉛:3〜4mg
• ビタミン B 群(チアミン、リボフラビン、ナイアシン、B6):有意な量を含みます

グルテンフリー:
• テフは天然で完全にグルテンフリーであり、セリアック病の方にも安全で、グルテンフリー食に適しています

血糖応答:
• 比較的低め〜中程度の血糖指数(GI 値)に関連しており、血糖値の管理に特に有益です。研究により、糖尿病患者集団における血糖コントロールの改善に役立つ可能性が示唆されています
テフは温暖期に生育する一年生穀物で、主に穀粒を目的として栽培され、エチオピア国外でも栽培を試みる国が増えています。

気候要件:
• 温暖期作物。生育期間中の最適昼間気温は 20〜27℃
• 霜に弱いため、温帯地域では最終霜日後に播種する必要があります
• 60〜120 日の生育サイクル中に、450〜550mm の均等に降る降雨量、または補助灌漑が必要です

土壌:
• 水はけの良い肥沃な壌土を好みます。冠水には耐えられません
• 土壌 pH は 5.5〜7.5 が理想的です
• 種子が極めて小さいため、畑は微細で固く整った種床に整える必要があります

播種:
• 播種量:10〜25kg/ha(まき付け播種では多め、条播きでは少なめ)
• 種子は地表にばらまくか、浅く土に混ぜ込みます(深さ 0.5〜1.5cm)。種子が非常に小さく貯蔵養分が限られているため、深く埋めてはいけません
• 温暖で湿潤な条件下(最適土壌温度:15〜35℃)では、3〜5 日で発芽します
• ばらまき、条まき、または苗の移植によって播種可能です

水やり・灌漑:
• 水分要求量は中程度。分げつ期および登熟期に十分な水分が不可欠です
• 過剰な水分は倒伏(茎の倒れ)や病気を引き起こします

日照:
• 直射日光が必要です。日陰では生育が悪くなります

施肥:
• 窒素施肥に反応しますが、過剰な窒素は倒伏のリスクを高めます
• リン欠乏土壌ではリン酸施肥がしばしば有益です
• 土壌の肥沃度によりますが、一般的な推奨量は窒素 40〜60kg/ha、リン酸 20〜40kg/ha です

収穫:
• 播種から 60〜120 日後、円錐花序が黄金色になり、穀粒が硬化した頃に収穫可能です
• 刈り取りは、エチオピアでは通常手作業で行われ、機械化システムではコンバインを使用します
• 穀粒は脱穀・選別され、わらは家畜飼料として回収されます

繁殖:
• 種子のみによる繁殖。テフは一年生であり、1 シーズンで生活環を完了します

一般的な課題:
• 倒伏(茎の倒れ)が最も重大な農学的問題であり、収量や収穫効率を低下させます
• 地域によっては、熟した穀粒に対する鳥害が深刻になることがあります
• エチオピア国外では、改良された倒伏抵抗性品種の利用が限られています(ただし育種プログラムは拡大しています)
テフは食品、家畜飼料、そして新興の産業用途まで多岐にわたる用途があります。

人間の食料:
• インジェラ:最も代表的で象徴的な利用法。テフの粉を水と混ぜて 2〜5 日発酵させてサワードウの生地にし、それを大きな平たい粘土製の鉄板(ミタッド)で焼いて、スポンジ状でわずかに酸味のある平たいパンにします。エチオピアおよびエリトリアの食文化において、インジェラは皿、調理器具、そして食物の役割を同時に果たします
• ポリッジ(ゲンフォ):白または茶色のテフを水で煮て濃厚な温かいポリッジにし、しばしばスパイス入りのバターや唐辛子を添えて提供されます
• パン・菓子類:テフ粉は世界的に、グルテンフリーのパン、パンケーキ、マフィン、クッキー、パスタなどに利用が増えています
• 飲料:テフはエチオピアの伝統的なビールであるテラや、蒸留酒のカティカラの製造に使用されます
• 乳幼児用食品:消化が良く鉄分が豊富なため、乳児用シリアルに使用されます

家畜飼料:
• テフのわらはエチオピアにおいて価値ある家畜飼料であり、特に牛用として、他のほとんどの穀物のわらよりも栄養価が高いとされています

その他の用途:
• 建築資材:テフのわらは伝統的に泥や水と混ぜられ、エチオピアの建築において壁や床の漆喰として使用されます
• 生分解性包装材や産業用途に向けたテフのでんぷんに関する新興研究も進んでいます

文化的意義:
• テフはエチオピアにおいて深く文化的・精神的意義を持っており、テフ製のインジェラは食事や社会的儀式に不可欠とされています。インジェラを分け合うことは友情と共同体の象徴です
• エチオピアは国内の食料安全保障を保護するため、生のテフの輸出を制限していますが、加工されたテフ製品(粉、インジェラ)は輸出されています

豆知識

テフの小さな種子には、その大きさからは想像もできないほどの力があります。 • テフの種子 1 粒の重さはわずか約 0.3 ミリグラムで、小麦の粒の約 150 分の 1 です。小さじ 1 杯を埋めるには、約 15 万粒のテフの種子が必要です • 粒は極めて小さいにもかかわらず、最適な条件下では 1 株あたり最大 1,000 万〜2,000 万個もの種子を生産することができます • テフは最も発芽が速い穀物作物の一つで、温暖で湿潤な条件下では播種からわずか 24〜36 時間で発芽し始めることがあります • エチオピアでは、テフは「眠らない穀物」と呼ばれることもあります。その重要性から、農家は生育期間中であれば昼夜を問わず、播種、除草、収穫を行うからです • テフの鉄分含有量は非常に高く、世界の長距離走を支配するエチオピア人ランナーたちの中には、テフベースの食事(特にインジェラ)が、彼らの持久力や酸素運搬能力に貢献している要因の一つであると信じている者もいます • テフは 20 世紀後半までエチオピア国外ではほとんど知られていませんでした。エチオピア政府は国内の不足を防ぐため 2006 年に生のテフの輸出を禁止し、テフを主原料とした製品がヨーロッパ、北米、オーストラリアのスーパーマーケットの店頭に「古代穀物」かつグルテンフリーのスーパーフードとして並ぶようになったのは 2010 年代になってからのことです

詳しく見る
共有: LINE コピーしました!

関連する植物