ケントランサス(Centranthus ruber)は、一般にレッド・バレリアン、ジュピターの髭、キツネのブラシなどの名で知られ、スイカズラ科に属する多年草の顕花植物です。無関係な属であるバレリアナ属(Valeriana)と「バレリアン」という共通名を共有していますが、ケントランサス・ルベルは別種であり、鮮やかな crimson(深紅)からピンク色の香りのある小花の房と、痩せ地、岩場、石灰質の土壌にも生育する驚異的な適応力によって珍重されています。
• 地中海地方原産。世界中の温帯地域に広く帰化している
• 草丈は 30〜80cm。茂り状で直立〜半匍匐性の生育形態
• 花は小型(約 1cm)で筒状、5 裂し、密な集散花序を頂部に形成する
• 各花の基部には細い距(きょ)を持ち、これが同定の重要な特徴となる
• 晩春から夏にかけて多量に開花し、時には初秋まで咲き続ける
• 花は花粉媒介者、特にチョウ、ハチ、ハチドリを強く惹きつける
• 葉は粉白色(青緑〜灰緑色)を帯び、やや多肉質で対生する
• 葉を傷つけると、かすかではあるが独特の強い香りを放つ
分類
• 原産地には、スペイン、フランス、イタリア、ギリシャ、トルコ、モロッコ、アルジェリア、チュニジアなどの国々が含まれる
• 少なくとも 16 世紀からは観賞植物として栽培されてきた
• イギリス諸島、北米の一部、オーストラリア、南アフリカなど、温帯地域に広く帰化している
• 属名の Centranthus は、花の特徴である「距」に由来するギリシャ語の「kentron(針・距)」と「anthos(花)」に由来する
• 種小名の「ruber」はラテン語で「赤」を意味し、代表的な花色を表している
• 「ジュピターの髭」という共通名は、少なくとも 16 世紀から英語の園芸文献で使用されている
• 原産地である地中海の自生地では、古い壁、岩場、石灰岩の崖などで一般的に生育している
根系:
• 太く多肉質の主根を発達させ、乾燥し栄養分の少ない土壌での生存を可能にする
• 主根は岩の隙間深くまで伸び、水分を吸収することができる
茎:
• 直立〜斜上し、草丈 30〜80cm。好条件下では 1m に達することもある
• 茎は無毛(滑らかで毛がない)で、やや多肉質、粉白色を帯びる
• 下部は老成するとわずかに木質化することがある
葉:
• 茎に対して対生する
• 形状:卵形〜披針形、長さ 5〜12cm
• 葉縁:全縁(滑らか)またはまれに基部付近に浅い鋸歯を数個持つ
• 質感:やや多肉質で粉白色(蝋のような青緑色の被膜)を帯びる
• 上部の葉は無柄(葉柄がない)であり、下部の葉は短い葉柄を持つことがある
花:
• 密で目立つ頂生集散花序(平たい房状の花序)に多数つく
• 個々の花は小型(約 1cm)で筒状、5 枚の花弁が合着している
• 花色は濃紅色からピンク色まで変化し、白花品種(var. 'Albus')も存在する
• 各花の基部には細い距(長さ約 5〜8mm)を持ち、これが決定的な特徴である
• 花は両性花(雄しべと雌しべの両方を持つ)
• 果実期になると萼が羽毛状の冠毛(そう毛)となり、風による散布を助ける
果実と種子:
• 果実は小型で乾燥した 1 種子の痩果(約 3〜4mm)
• 風散布のための羽毛状の冠毛(変化した萼)を備えている
• 1 株で 1 シーズンに数千個の種子を生産することがある
生育地の好み:
• 岩場、崖、古い壁、遺跡
• 石灰岩の露頭やチョーク草地
• 道端、鉄道の路盤、攪乱された土地
• 地中海地方の海岸の崖や砂丘
気候と耐寒性:
• USDA 耐寒区分 5〜9 区(冬季の気温が約 -20°C / -4°F まで耐える)
• 定着後は耐乾性があり、地中海性気候に典型的な高温乾燥した夏に適応している
• 日向を好むが、半日陰にも耐える
受粉と野生生物:
• 花は花粉媒介者、特にチョウ(アゲハチョウやヒョウモンチョウなど)、ハチ、北米ではハチドリを強く惹きつける
• 開花期が長く(晩春から秋)、貴重な蜜源となる
• 種子は羽毛状の冠毛により風によって散布される(風散布)
侵略の可能性:
• オーストラリアやカリフォルニアの一部など、一部の地域では侵略的外来種に指定されている
• 攪乱された岩場や栄養分の少ない土壌に定着する能力により、特定の生態系において競争優位性を持つ
• 帰化した海岸や崖の生育地では、在来植物を駆逐する可能性がある
日照:
• 日向を好む(1 日 6 時間以上の直射日光が望ましい)
• 半日陰にも耐えるが、開花量は減少する
土壌:
• 痩せ地、水はけが良く、アルカリ性〜中性の土壌(pH 6.5〜8.0)でよく生育する
• 石灰岩、チョーク、砂利混じりの土壌で特に良好な生育を示す
• 重粘土、過湿、酸性の土壌は苦手とする
水やり:
• 定着後は耐乾性があり、水のやりすぎの方が不足よりも問題になりやすい
• 控えめに水を与え、土壌が乾いてから次に水やりを行う
• 特に冬季の過剰な水分は根腐れの原因となる
温度:
• 約 -20°C(-4°F)まで耐寒性がある
• 高温や長期間の乾燥にも耐える
• 寒冷地では、厳しい冬に株元を保護するためにマルチングを行うとよい
剪定:
• 花がらを摘むことで、開花を促進し、過度な自家結実を防ぐことができる
• 秋の終わりか春先に強く切り戻すことで、草姿を整え、 vigorous な新芽の発生を促す
繁殖:
• 種から容易に育ち、好適な条件下では自家播種でよく増える
• 春または秋に直接播種(直播き)が可能
• 春の株分けや、初夏の挿し木(軟枝挿し)でも増殖できる
主な問題点:
• 一般的に害虫や病気の心配は少ない
• 水はけが悪い、または過湿な土壌では根腐れを起こすことがある
• 自家播種が旺盛なため、好適な条件下では雑草化したり侵略的になったりする可能性がある
観賞用:
• 長期間楽しめるカラフルな花房を目的として、広く園芸栽培されている
• コテージガーデン、ロックガーデン、地中海風ガーデン、花粉媒介者向けガーデンで人気がある
• 白花品種の「アルバス(Albus)」も広く栽培されている
• 他の多くの植物が生育できないような、過酷で乾燥した岩場でも生育する能力が評価されている
伝統医学:
• 歴史的に地中海地方の民間療法で使用されてきたが、鎮静作用でよく知られる真のバレリアン(Valeriana officinalis)と混同してはならない
• 一部の伝統的な情報源では、ケントランサス・ルベルの葉が軽度の鎮静剤または抗炎症剤として使用されたと報告されているが、科学的根拠は限られている
• 地中海地方の食文化の一部では、葉がサラダの緑黄色野菜や煮込み用のハーブとして稀に食用とされていた
生態学的用途:
• 花粉媒介者の個体群を支えるための貴重な蜜源植物
• 石灰岩基質や乾燥草地生態系における生息地再生プロジェクトで使用される
• 風で散布される種子は、裸地や攪乱された土地への定着に有用である
豆知識
共通名にもかかわらず、レッド・バレリアン(Centranthus ruber)は真のバレリアン(Valeriana officinalis)とは近縁ではありません。両者は全く異なる植物科(スイカズラ科 vs. スイカズラ科バレリアナ亜科、現在はしばしばオミナエシ科 Valerianaceae として扱われる)に属します。共通名が共有されるようになったのは、葉の形が表面的に似ており、香りも漠然と似ていたためです。 • ケントランサス・ルベルは、温帯気候において最も自家播種が旺盛な園芸植物の一つです。1 株で数千個もの風散布性の種子を生産し、実生は親植物から遠く離れた舗装のひび割れ、壁、モルタルの目地などから頻繁に出現します • 原産地である地中海地方では、古い遺跡や古代の壁に生育する代表的な植物であり、ヨーロッパの城や修道院の壁で何世紀も生育してきました。一部の植物学者は冗談めかして、これを「ヨーロッパの壁を造った植物」と呼ぶこともあります • 各種子に付いた羽毛状の冠毛により、風に乗ってかなりの距離を移動することができ、数階建てのビルの垂直な壁面から発芽した実生の記録もあります • 白花品種である Centranthus ruber var. 'Albus' は野生に自然発生し、何世紀も栽培されてきました。地域によっては、赤花と白花が隣り合って生育しています • イングランド南部の一部では、レッド・バレリアンが海岸の崖を非常に広範囲に占有しているため、本来は外来種であるにもかかわらず、現在ではチョークの崖の植物相を特徴づける種とみなされています
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