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ヒツジザサ(ピットシード・グースフット)

ヒツジザサ(ピットシード・グースフット)

Chenopodium berlandieri

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ヒツジザサ(Chenopodium berlandieri)は、ヒユ科に属する一年生草本であり、キヌア(Chenopodium quinoa)に極めて近縁で、その野生の祖先、あるいは近縁種と広く考えられています。北米における先コロンブス期農業の歴史において最も重要な植物の一つです。

• ヒツジザサ、ワウソントレ(メキシコ)、ラムズクォーターズ(C. album と共有)など、多くの一般名で知られています
• 偽穀物に分類され、イネ科植物ではありませんが、その種子は穀物と同様に利用されます
• 北米における初期の植物栽培中心地の一つである「東部農業複合体」の主要作物でした
• 種子は小さくレンズ状をしており、一般的に特徴的なくぼみのある種皮表面を持ちます。これが一般名「ピットシード(くぼみのある種子)」の由来となっています

Taxonomy

Kingdom Plantae
Phylum Tracheophyta
Class Magnoliopsida
Order Caryophyllales
Family Amaranthaceae
Genus Chenopodium
Species Chenopodium berlandieri
Chenopodium berlandieri は北米原産で、自然分布域はカナダ南部から米国全土を経てメキシコにまで及んでいます。

• 考古学的証拠によれば、約 3,500〜4,000 年前に米国中東部で栽培化が始まりました
• 栽培化された系統(C. berlandieri var. jonesianum または C. b. ssp. nuttalliae と分類されることもあります)は、東部林地帯の先住民によって栽培され、後にメソアメリカでも栽培されるようになりました
• メキシコでは、ワウソントレ(C. berlandieri ssp. nuttalliae)として知られる栽培型が先スペイン時代から栽培され続け、現在でも伝統的な食用作物となっています
• 本種はチノポディウム属に属し、同属は世界的に分布し、温帯から亜熱帯地域にかけて約 150〜200 種を含みます
• 世界的に人気のある偽穀物であるキヌア(Chenopodium quinoa)は、南米アンデスにおいて異なる野生のチノポディウム属祖先から独立して栽培化されましたが、C. berlandieri はその近縁種であり、キヌアの品種改良における潜在的な遺伝資源であると考えられています
Chenopodium berlandieri は成長が速い一年生草本で、好条件の下ではかなり大きくなります。

茎:
• 直立し、通常 30〜200 cm(丈夫な栽培型ではまれに 300 cm に達することもある)
• 太く、しばしば縦溝や稜があり、赤みや緑色の縞模様を帯びることがある
• 分枝の様子は、品種や生育条件によりまばらなものから密に分かれるものまで多様

葉:
• 互生し単葉で、一株の中でも形状に大きな変異が見られる
• 下葉はしばしば菱形〜卵形で、不規則な鋸歯または裂け目のある縁を持ち(長さ約 3〜8 cm)、
• 上葉になるにつれて次第に細くなり、披針形〜全縁となる
• 葉の両面は通常、粉を吹いたような白灰色の粉状の毛(胞状突起)で覆われており、特に若葉や成長点で顕著
• 葉柄は中程度か、それより短く、葉身と同程度かそれより短いことが多い

花:
• 小型で緑色、目立たず、花弁を欠く
• 頂生および腋生する穂または円錐花序に、密集した集まり(glomerules)としてつく
• 花は主に自家受粉(自家和合性)
• 各花は 5 個の萬、5 本の雄しべ、および 2〜3 個の柱頭を持つ 1 本の雌しべからなる

種子:
• レンズ状(レンズ形)で、直径は約 1.0〜1.5 mm
• 種皮表面に特徴的なくぼみ(蜂の巣状構造)があり、これが滑らかな種子を持つ C. album と区別する重要な同定特徴
• 野生型では黒〜黒褐色。栽培型ではより明るい色の種子を持つこともある
• 種子重量は非常に軽く、1 粒あたり約 0.3〜0.5 mg
• 種子は大量につけられ、一株で数万個もの種子を生産することがある

根系:
• 比較的に浅い主根系
• 繊維状の側根が土壌表層に広がる
Chenopodium berlandieri は非常に順応性が高く、攪乱された環境に共通して見られるパイオニア種です。

生育地:
• 攪乱された土壌(農耕地、道端、河川敷、廃棄地、放置地など)で繁茂する
• 栽培地や庭園では雑草として頻繁に発生する
• 本来の分布域では、開けた林地、草原、氾濫原などに生育
• 砂質、壌土、粘土質など多様な土壌タイプに耐性がある
• 栄養分、特に窒素に富んだ土壌を好む

気候:
• 温帯から亜熱帯まで、幅広い緯度範囲で生育する
• 軽度の霜には耐えるが、暖季性一年草であるため一般的には霜に弱い
• 発芽は通常、地温が 10〜15℃に達する春に起こる
• 発芽から種子成熟まで、単一の生育期間(約 3〜5 ヶ月)で生活環を完了する

繁殖:
• 主に自家受粉であり、隔離された環境でも確実に結実する
• 極めて多収で、一株あたり 1 万〜10 万個以上の種子を生産することもある
• 種子は休眠性を示し、土壌種子バンク中で数十年にわたり生存可能
• 種子の分散は、水、風、動物の活動、および人間の農業活動によって行われる

生態的役割:
• 穀食性の鳥類や小型哺乳類にとって重要な餌資源
• 様々な草食性昆虫の食草となり、花には花粉媒介者が訪れる
• 攪乱地における初期の生態的遷移において重要な役割を果たす
Chenopodium berlandieri は手のかからない植物で、多様な条件下で容易に生育するため、栽培作物としても雑草としても成功を収めています。

日照:
• 日向を好むが、半日陰にも耐える
• 最適な成長と結実は、日照時間が長く日光が豊富な条件下で得られる

土壌:
• ほとんどの土壌タイプに適応するが、水はけが良く有機物を中程度から多く含む肥沃な土壌で最もよく生育する
• 弱アルカリ性から中性の pH(6.0〜8.0)に耐える
• 中程度の塩分にも良好な耐性を示す

水やり:
• 水分要求量は中程度で、根付いてからは乾燥に強い
• 栄養成長期に適切な水分を与えることで、より大型化し種子収量も向上する
• 過湿な状態は避けること

温度:
• 暖季性一年草。発芽至適温度は地温で 15〜25℃
• 霜に当たると生育が阻害され、強い凍結で枯死することが多い
• 温帯地域では、最終霜が降りてから播種すること

繁殖:
• 種子繁殖のみ
• 種子は非常に小さいため、表面播種するか、ごく薄い土(約 1〜2 mm)をかける程度にする
• 好条件下では、通常 5〜10 日で発芽する
• 直播きが望ましいが、移植も可能(ただし一般的ではない)
• 個体群によっては、休眠打破のために低温層積処理を施すと発芽が促進されることがある

株間:
• 種子収穫を目的とする場合:株間 15〜30 cm、条間 30〜60 cm で間引きまたは栽植
• 葉菜として利用する場合:より狭い株間(約 10〜15 cm)とすることで、柔らかい新芽の成長を促す

一般的な問題点:
• 一般的に病害虫に強い
• 庭園などでは雑草化し、自家播種で増えすぎることがある
• アブラムシやハモグリバエによる食害が稀に見られる
• 多湿条件下では、べと病(Peronospora 属)が発生することがある

豆知識

ヒツジザサは古代北米農業の「創始作物」の一つでした。トウモロコシが主要な主食となる遥か以前、北米東部の先住民たちは、この目立たない雑草を穀物作物として栽培していたのです。 • オハイオ川およびミシシッピ川流域の遺跡からの考古学的証拠によれば、C. berlandieri は紀元前 1800 年(約 4,000 年前)にはすでに栽培化されていた • この栽培型は「東部農業複合体」の一部であり、ヒマワリ、サンプウィード(イボタノキモドキ)、メイグラス、リトルビーンなどの種子作物とともに、数千年にわたり先住民コミュニティを支えてきた • ヒツジザサの栽培化には驚くべき遺伝的変化が伴った。野生型で 40〜80 マイクロメートルあった種皮の厚さが、栽培型では 4〜8 マイクロメートルへと 10 分の 1 にまで薄くなった。これにより種子の加工が容易になり、食べやすくなった • この「薄皮(シン・テスタ)」の形質は単一の遺伝子によって制御されており、あらゆる栽培植物における「栽培化症候群」の最も明確な例の一つとされている • トウモロコシがメソアメリカからもたらされた後、東部農業複合体の作物の多くを凌駕するようになったが、ヒツジザサが完全に姿を消すことはなかった。メキシコではワウソントレ型が数千年にわたり絶えることなく栽培され続け、現在でも市場で販売されている。そのブロッコリーに似た花序は衣を付けて揚げられ、お好み焼きのようにして食べられている • 本種は現在、その栄養価、乾燥耐性、やせた土壌でも生育可能な能力から、限界環境下における食料安全保障の潜在力を持つ「顧みられざる作物」として、科学的関心を再び集めている • Chenopodium berlandieri はキヌア(C. quinoa)と交雑可能であり、新たな栽培環境へのキヌアの適応力を高めるための貴重な遺伝資源となっている

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