ハリイ(Eleocharis palustris)は、カヤツリグサ科に属する多年生の水生または半水生植物で、共通名をコモン・スパイクラッシュ、コモン・スパイクセッジ、クリーピング・スパイクラッシュなどと呼ぶこともあります。北半球全域に広く分布し、生態学的に最も重要な湿地種の 1 つです。
• 這う根茎から立ち上がる、細く鮮やかな緑色の葉のない円筒形の茎を持つ
• 茎の先端に小さな頂生の小穂をつけ、特徴的な「棘(とげ)のある」外見を呈する
• カヤツリグサ科に属するが、よくイグサ科の植物と見間違えられる
• 湿地の土壌を安定させ、水を浄化し、水生生物の生息地を提供する上で重要な役割を果たす
• 攪乱された地域や新たに形成された湿地に最初に侵入する種の 1 つであり、生態学的遷移におけるパイオニア種である
• 自生域は北極圏から南へ、ヨーロッパ、北アメリカ、中央アジアの温帯地域にまで及ぶ
• 海面から、一部の山岳地帯では標高 2,500 メートルを超える高さにまで生育している
• 分類学的には、属名の Eleocharis はギリシャ語の「helos(沼)」と「charis(優雅さ)」に由来し、世界中に 200 種以上が含まれる
• Eleocharis palustris は本属の模式種であり、最も変異に富む種の 1 つで、いくつかの亜種や変種が認識されている
• その広大な分布域は、根茎による効率的な栄養繁殖、多量の種子生産、および幅広い水深や基質タイプへの耐性によるものである
• 化石記録によれば、スパイクラッシュの系統は第三紀後期にまでさかのぼり、ヨーロッパ中の更新世の堆積物コアから Eleocharis 型の花粉粒が発見されている
根茎と茎:
• 細く這う根茎によって広がり、柔らかく冠水した基質中に密なマット状または集団を形成する
• 茎(花茎)は細く、円筒形〜やや扁平で、鮮やかな緑色をしており、直径は通常 1〜3 mm である
• 茎は直立し、滑らかで葉がなく、光合成は主に緑色の茎で行われる
• 茎の内部には海綿状の髄があり、通気組織(アレンキマ)による空気通路を持っており、嫌気性の湿地土壌におけるガス交換を促進する
葉:
• 葉は茎の基部にある鞘(さや)に退化しており、通常は褐色〜赤褐色をしている
• 鞘は短く(1〜3 cm)、茎をしっかりと包み、先端は切り立った形か、わずかに斜めになっている
• 真の葉身は欠如しており、これが多くの他の湿地植物と区別する重要な特徴である
小穂と花:
• 各茎の頂部に 1 個の頂生小穂をつける
• 小穂は卵形〜披針形で長さ 5〜25 mm、10〜40 個の微小な花(小花)を含む
• 各花は 6 本の花被裂毛(毛髪状の構造)と、3 稜のある子房を持つ 2〜3 本の雄しべから成る
• 鱗片(苞穎)は卵形〜広卵形で長さ 2〜4 mm、緑色の中肋と褐色を帯びた縁を持つ
果実と種子:
• 果実は小さくレンズ状(両凸形)の痩果で、長さは約 1〜1.5 mm である
• 痩果は黄色〜暗褐色で表面は滑らか、頂部には明瞭な突起(花柱基部が膨れたもの)を持つ
• この突起の形状や大きさは、Eleocharis 種を同定する際の重要な特徴である
• 各痩果には 1 個の種子が含まれており、1 株で 1 シーズンに数百個の痩果を生産することがある
生育地:
• 池、湖、緩やかな流れの河川や小川の浅い縁辺部
• 湿原、低層湿原、高層湿原、湿った草原、用水路
• 季節的に冠水する窪地や春にのみ水が溜まる水たまり(春水たまり)
• 汽水性の沿岸湿地や河口域(弱い塩分濃度にも耐性がある)
• 通常は水深 0〜30 cm で生育するが、短期間のより深い冠水にも耐えることができる
土壌と水質の好み:
• 有機物に富んだ柔らかい泥質またはピート質の基質を好む
• 広い pH 範囲(約 5.0〜8.5)に耐性がある
• 栄養豊富な(富栄養)状態から栄養が少ない(貧栄養)状態の両方で生育可能
• 止水から緩やかな流水までで生育できる
生態学的役割:
• 根茎による成長が岸辺を安定させ、侵食を軽減する
• 密集した群落は浮遊懸濁物を濾過し、過剰な栄養分(窒素、リン)を吸収して水質を改善する
• 水鳥、渉禽類、無脊椎動物にとって重要な生息地および餌場を提供する
• 種子はカモ類、クイナ類、その他の湿地鳥類にとって重要な餌資源となる
• 茎や根茎は水生無脊椎動物、両生類の幼生、稚魚の隠れ家となる
• 湿地修復におけるパイオニア種として機能し、裸の泥干拓地に急速に定着する
繁殖と分散:
• 栄養繁殖(根茎の伸展による)と有性生殖(種子による)の両方を行う
• 根茎の断片は水流、マスクラット、水鳥などによって運ばれ、新しい群落を形成する
• 種子は水、風、そして水鳥の羽や体毛への付着によって分散する
• 種子は湿地の土壌中にある種子バンクで数十年間生存可能であり、条件が整うと発芽する
• 発芽には通常、光と、泥面を露出させる水位の変動が必要である
日照:
• 日向〜半日陰を好む。1 日あたり最低 6 時間以上の直射日光があると最もよく生育する
• 薄い日陰にも耐えるが、小穂の数が減る可能性がある
水深と植栽:
• 理想的な水深は冠水から 15 cm 程度
• 季節的な 30 cm までの冠水にも耐える
• 池の浅瀬、ボガードン(湿地風庭園)、または水中の容器に植える
用土:
• 重質な粘土、壌土、または有機物に富んだ泥
• 専用の水生植物用用土は不要で、自然の池の堆積物で十分
• 重質な園芸用土壌を入れた水生植物用の鉢(バスケット)に植えることも可能(軽くて浮きやすい培養土は避ける)
温度:
• 極めて耐寒性が強く、−30°C を大きく下回る冬の気温にも耐える(USDA ハーディネスゾーン 3〜10)
• 冬は地上部が枯れて根茎のみとなり、春に勢いよく再生する
増やし方:
• 春または初秋に根茎の株分けを行う
• 春に露出した湿った泥の上に播種し、発芽するまで常に湿った状態を保つ
• 根茎の断片を直接浅い水中に植えると、容易に根付く
管理:
• 定着後はほとんど手入れが不要
• 小さな池などでは根茎で侵略的に広がることがあるため、鉢植えにして拡大を制御するとよい
• 春の新しい成長を促すため、晩冬に枯れた茎を除去する
• 肥料は不要。過剰な栄養分は藻類との競合を招く恐れがある
豆知識
ハリイはカヤツリグサ科に属しており、この科は何千万年もの間、湿地生態系の主要な構成要素であり続けてきました。 • カヤツリグサ科は約 6,500 万〜8,000 万年前の白亜紀後期に他の単子葉植物から分岐しました。つまり、スパイクラッシュの仲間は最後の恐竜たちと時を同じくして生育していたことになります • 属名の Eleocharis は、古代ギリシャ語の「helos(ἕλος:沼または草地)」と「charis(χάρις:優雅さ)」に由来し、文字通り「沼の優雅さ」を意味します 葉を持たず茎のみで光合成を行うという本植物の戦略は、驚くべき適応です。 • 真の葉をなくし緑色の茎で光合成を行うことで、流水中での抵抗を減らし、波の作用による損傷を最小限に抑えています • 内部の通気組織(アレンキマ)はシュノーケルのように機能し、空中の茎から酸素を酸素の少ない泥の中にある根へと運びます。これは冠水した土壌での生活に不可欠な適応です ハリイは「生きた水のフィルター」とも言えます。 • 1 つの密集した群落は、周囲の水の中の窒素やリンの濃度を大幅に低減し、藻類の大発生を防ぐのに役立ちます • 密な根茎のネットワークが微細な堆積物を捕捉し、徐々に土壌を形成して他の湿地種のための新しい生息地を作り出します • このため、世界中の下水処理を目的とした人工湿地で最も一般的に使用される種の 1 つとなっています Eleocharis palustris の微小な痩果は、野生生物にとって重要な食料源です。 • 研究により、スパイクラッシュの種子が、特定のカモ類の秋季の食事量の最大 30% を占めることが示されています • 湿地の泥中に埋もれた種子は 50 年以上も生存能力を保ち、「種子バンク」を形成します。これにより、長期間の干ばつや攪乱の後であっても、本種が再び姿を現すことが保証されているのです
詳しく見るコメント (0)
まだコメントがありません。最初のコメントを書きましょう!