セイヨウオダマキ(Aquilegia vulgaris)は、キンポウゲ科に属する愛らしい多年草で、何世紀にもわたり園芸家や植物学者を魅了してきた特徴的な距(ふけろ:花弁の後ろに突き出た袋状の部分)を持つ花で知られています。
属名の「Aquilegia(アキレギア)」は、花の距がワシの爪に似ていることから、ラテン語の「aquila(ワシ)」に由来すると考えられています。一方、英名の「columbine(コロンバイン)」は、集まった距が鳩の群れに似ていると想像されたことにちなみ、ラテン語の「columba(鳩)」に由来しています。
• Aquilegia vulgaris は、北半球に分布するアキレギア属約 60〜70 種のうちの 1 種です
• 最も広く栽培されている種のひとつであり、少なくとも 13 世紀以来、ヨーロッパの庭園で育てられてきました
• 紫色、青色、ピンク色、白色など、下向きに咲くベル型の花が愛され、コテージガーデンや林縁の植え込みに欠かせない植物です
• オダマキ属は交雑しやすく、無数の園芸品種が生み出されていることでも知られています
• 温帯ヨーロッパの草原、林縁、岩礫地などに自生しています
• 北アメリカの一部など、他の温帯地域にも導入・帰化しています
• アキレギア属全体としては北半球に分布し、特に北アメリカと東アジアに多様の中心があります
セイヨウオダマキには、ヨーロッパの庭園における長い栽培の歴史があります。
• 中世の薬草書や修道院の庭園に記録が残っています
• 16 世紀までには、イギリスやヨーロッパ大陸で広く定着した園芸植物となっていました
• 本種からは多数の栽培品種や交雑群が生まれ、人気のある「マカナ・ジャイアンツ」やその他の大輪系品種などが含まれています
根と茎:
• 太く分枝する直根を持ち、土壌深くまで伸びます
• 茎は直立し、細く分枝してやや毛が生えており(有毛)、しばしば赤紫色を帯びています
• 茎は中空でもろい性質があります
葉:
• 根生葉は長い葉柄を持ち、二回三出複葉(3 つの小葉に分かれ、それがさらに 3 つに分かれる)で、小葉は丸みを帯びて裂けます
• 小葉の幅は通常 1.5〜3cm で、縁は鋸歯状(波打った形状)をしています
• 葉色は青緑色から灰緑色で、全体に白粉を吹いたような独特の外観を呈します
• 茎葉(茎につく葉)はより小さく切れ込みも浅く、茎の上部に行くほど葉柄がなくなります
花:
• 下向きかやや垂れ下がり、茎の先端に少数の花がついたまばらな集散花序をつけます
• 花径は約 3〜5cm で、花弁のように見える 5 枚の萠(がく)と、本来の花弁 5 枚から成ります
• 花弁は特徴的な蜜を持つ距へと変化しており、長さ 1〜2cm の中空で後方に突き出た管状になっています
• 萠は通常紫色、青色、ピンク色、または白色で、外側に広がります
• 距の先端は通常かぎ状か曲がっており、同定の重要な特徴です
• 多数の黄色い雄しべが花弁から突き出しています
• 花は雄性先熟(雄しべが雌しべより先に成熟する)であり、他家受粉を促進します
果実と種子:
• 果実は袋果(成熟すると一方の縫合線から裂開する乾燥した果実)です
• 1 花あたり 5 個の袋果が集まった集合袋果を形成します
• 種子は小さく(約 2mm)、滑らかで光沢のある黒色で、多数できます
• 袋果が裂開(裂けること)して風に揺られる際、種子が風によって散布されます
生育地:
• 林縁、生け垣、低木地
• 岩礫地、石灰岩の露頭、崖っぷち
• 水はけの良い土壌の草原や草地
• しばしば石灰質(石灰分に富む)土壌で見られますが、多様な土壌タイプに耐性があります
受粉:
• 主に、距の奥深くにある蜜に届く長い舌を持つマルハナバチ(Bombus 属)やその他のハチ類によって受粉されます
• ハチドリは北アメリカ産のアキレギア属の重要な受粉者ですが、ヨーロッパ産の A. vulgaris への関与はそれほど大きくありません
• 距の長さと曲がり具合は、主要な受粉者の口吻(こうふん:口が伸びた部分)の長さと密接に対応しており、共進化の古典的な例です
• 地域によってはチョウやスズメガの仲間も訪れます
繁殖:
• 種子によって繁殖します。自家和合性がありますが、他家受粉によりより丈夫な個体が生まれます
• 種子が発芽するには、低温湿潤な状態(低温層積処理)による休眠打破の期間が必要です
• 発芽は通常、越冬後の春に起こります
• 個体の寿命は比較的短く(通常 3〜5 年)、好条件ではこぼれ種によって容易に増殖します
• 近接して栽培されている他のアキレギア属の種とは容易に交雑します
• 強心毒素(強心配糖体)やシアン配糖体を含んでいます
• 特に種子の毒性が強く、摂取すると重度の胃腸障害、嘔吐、心臓症状を引き起こす可能性があります
• 植物の樹液に皮膚が触れると、感受性のある人では皮膚炎を起こすことがあります
• 歴史的に、民間療法でごく少量が用いられることもありましたが、その毒性から自己判断での使用は極めて危険です
• 家畜にとっても有毒ですが、苦味があるため、通常は動物の方から避けます
日照:
• 半日陰から木漏れ日が当たる場所を好みます
• 涼しい気候で土壌が湿っていれば、日向でも生育可能です
• 暑い地域では、葉焼けを防ぐために午後の日陰が不可欠です
用土:
• 湿り気があり水はけが良く、腐植に富んだ土壌でよく育ちます
• 弱酸性から弱アルカリ性(pH 6.0〜7.5)まで、幅広い pH に耐性があります
• 石灰質(チョーク質や石灰岩質)の土壌でもよく育ちます
• 重く水はけの悪い粘土質の土壌は避けてください
水やり:
• 土壌を常に湿った状態に保ちますが、過湿にはしないでください
• 乾燥する時期は水やりが必要です。乾燥には強くありません
• マルチングを行うと、土壌の水分保持に役立ち、根を涼しく保つことができます
温度:
• 米国農務省(USDA)の耐寒区分 3〜8 区に相当し、冬季は約 -40°C まで耐えます
• 夏は涼しいか、あるいは穏やかな気温を好みます
• 高温多湿の夏が続く地域では生育が難しい場合があります
増やし方:
• 実生:新鮮な種子を夏から秋にまきます。発芽には低温層積処理が必要です
• 庭ではこぼれ種でよく増え、実生は若いうちに移植可能です
• 株分けは早春に可能ですが、直根が深いため成功しにくく、根を傷めることを嫌います
主なトラブル:
• ハモグリバエ:幼虫が葉の中にトンネルを掘り、特徴的な白い蛇行痕を残します。被害葉は取り除いて処分してください
• うどんこ病:湿度が高く風通しが悪いと発生することがあります
• 短命な多年草:個体は 3〜4 年で衰えることがありますが、こぼれ種によって途切れることなく生育し続けます
• アブラムシが新芽に付くことがたまにあります
豆知識
オダマキの距を持つ花は、植物とその受粉者の間の共進化の教科書的な例です。 • アキレギア属の蜜を持つ距の長さと曲がり方は種によって劇的に異なり、短く真っ直ぐなものから、長く大きく曲がったものまで多様です • これらの違いは受粉者に対応しています。短い距はハチ用、長く曲がった距はスズメガ用、そして中程度のものはハチドリ用です • チャールズ・ダーウィンは、長い距を持つマダガスカル産のラン(アングレクム・セスキペダレ)を調査した際、極めて長い口吻を持つガの存在を予言しましたが、オダマキの距の進化にも同様の原理が働いています • アキレギア属は現在、適応放散や受粉者に駆動された種分化を研究する際の、進化生物学におけるモデルシステムとなっています その他の興味深い事実: • 中世ヨーロッパでは、オダマキは聖霊や聖母マリアと結びつけられ、その花の形は「聖なる鳩」を表すと言われました • ハンス・メムリンクなど北方ルネサンスの巨匠たちによる絵画など、数多くの芸術作品に描かれています • オダマキの種子は非常に小さく、1 グラムあたり 500 個以上が含まれています • セイヨウオダマキのかぎ状の蜜の距は、マルハナバチの舌の長さに特化して適応しています。舌の短いハチは、花を受粉させることなく距の付け根に穴を開けて蜜だけを盗む「盗蜜」行為を行うことがよくあります
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