クラブコムギ(Triticum compactum)は、イネ科に属するコムギの一種であり、その名前の由来ともなっている特徴的な短く密に詰まった穂によって他種と区別されます。最も古くから栽培されている穀物の一つであり、現在も重要な穀物作物として、特に菓子やクッキーの製造に最適な柔らかく低タンパクな粉として高く評価されています。
• 約 1 万年前、他の初期のコムギ種と共に肥沃な三日月地帯で初めて domesticate(栽培化)された
• 6 倍体コムギ種(2n = 6x = 42 染色体)の一つであり、3 つの異なるサブゲノム(AABBDD)を持つ
• 一般的なパンコムギ(Triticum aestivum)と比べ、著しく短く圧縮された穂と、より密に詰まった小穂によって区別される
• 古い分類体系では、パンコムギの亜種(T. aestivum subsp. compactum)として分類されることもある
• 特にスイス、フランス、ドイツのアルプス地域や寒冷地など、ヨーロッパ農業において歴史的に重要であった
• 祖先系統は、野生エンマーコムギ(Triticum dicoccoides)とヤギムギ属の一種である Aegilops tauschii との交雑にさかのぼる
• 中世ヨーロッパ、特にスイスやドイツ南部のアルプス渓谷地帯で広く栽培されていた
• ヨーロッパの農業伝統において、歴史的に「スイス・ウィート」または「ソフト・ウィート」として知られていた
• 現在では一般的なパンコムギに比べ栽培面積は小さいが、米国北西部、カナダ、およびヨーロッパの一部で相当量が生産されている
• 冷涼で生育期間が短い環境への適応能力により、高地および北欧の農業において主食作物となってきた
稈(茎):
• 直立し、中空で円筒形。節は 4〜6 個
• 草丈は 60〜100 cm で、一般的なパンコムギより全体的に短い
• 品種によっては表面が滑らかで蝋物質(粉白色)を帯びる
葉:
• 葉身は扁平で線形、長さ 15〜30 cm、幅 1〜2 cm
• 葉耳舌は短く膜質
• 葉耳があり、通常は茎を抱き、しばしば微細な毛を持つ
花序(穂):
• 密で側方から圧縮された穂で、通常 4〜7 cm の長さ
• 小穂が密に詰まっており、穂全体が特徴的なこん棒状(クラブ状)の外観を呈する(これが和名・英名の由来)
• 各小穂には 3〜5 個の小花を含み、そのうち 2〜3 個が通常稔性を持つ
• 包穎には竜頭があり、小穂より短い
穀粒(穎果):
• パンコムギの穀粒より小さく丸みを帯びている
• 品種により、通常赤褐色から白色まで様々
• 胚乳の質感は軟質で、硬質パンコムギと比較してタンパク質含有量が低い(通常 8〜10%)
• 千粒重は概ね 25〜35 g で、ほとんどのパンコムギ品種より軽い
根系:
• イネ科に典型的なひげ根であり、土壌プロファイル中に 30〜60 cm 延伸する
• 主根は持たず、株元からの不定根に依存する
気候:
• 冷涼で湿潤な生育条件を好む。栄養成長期の至適温度は 10〜20℃
• 生育初期には軽度の霜に耐性がある
• 年間降水量で約 400〜700 mm を必要とする
• 一般的なパンコムギより耐暑性が低く、高緯度地域や高地により適している
土壌:
• 排水性が良く肥沃な壌土で最も良く生育する
• 弱酸性から中性(pH 6.0〜7.5)に耐性がある
• 過湿や塩分の強い土壌では生育不良となる
作期:
• 通常、秋まき(冬性種)または早春まき(春性種)される
• 冬性品種は開花を開始するために春化(低温への曝露)期間を必要とする
• 春まきから成熟までの生育期間の長さは、概ね 90〜120 日である
受粉:
• 主に自家受粉(自殖性)
• 花は風媒花であり、小花は小さく目立たない
• 他家受粉の割合は通常非常に低い(1% 未満)
日照:
• 最適な生育と登熟のためには、十分な日光を必要とする
• 1 日あたり最低 6〜8 時間の直射日光が必要
土壌:
• 排水性の良い壌土または粘壌土が好ましい
• 土壌 pH は 6.0〜7.5 が理想的
• 土壌構造と保水性を向上させるために有機物をすき込む
灌水:
• 分けつ期、茎伸長期、登熟期における土壌水分の維持が極めて重要
• 過剰な灌水はフザリウム穂枯れ病などの真菌性病害を助長するため避ける
• 開花期の乾燥ストレスは穀粒収量を著しく減少させる
温度:
• 至適生育温度:栄養成長期で 10〜20℃
• 冬性品種は、積雪があれば -15℃ までの低温に耐えうる
• 登熟期の 30℃を超える高温ストレスに弱い
繁殖:
• 専ら種子によって繁殖する
• 播種量:冬性種で 1 ヘクタールあたり約 100〜150 kg。春性種ではこれよりやや多め
• 播種深:2〜4 cm
主な問題点:
• フザリウム穂枯れ病(FHB)、うどんこ病、さび病に罹りやすい
• 草丈が低く穂が密であるため、多肥条件では倒伏が問題となることがある
• 生育初期の雑草との競合は、収量を著しく減少させる可能性がある
• 一部の伝統品種では、成熟期の脱粒(粒落ち)が見られる
豆知識
クラブコムギの驚くほどコンパクトな穂は、穂軸(穂の中心軸)を短くする特定の遺伝子変異の結果であり、これにより小穂が密に詰まることで、穂先が特徴的なこん棒状(クラブ状)になります。これが一般名の由来であるとともに、種小名「compactum(コンパクトな)」の由来ともなっています。 • 現在では一般的なパンコムギほど広くは栽培されていないものの、クラブコムギはその耐寒性と短い作期により不可欠な存在であった中世ヨーロッパ、特にアルプス地域の農業史において重要な役割を果たした • クラブコムギから得られる軟質・低タンパクの粉は、クッキー、菓子、クラッカーの製造に最適であるとされ、高タンパクのパンコムギ粉では再現できない、きめ細かくぼろぼろした食感を生み出す • クラブコムギは、ほぼすべての品種でコンパクトな穂の形質が固定されている数少ないコムギ種の一つであり、栽培されているコムギ種の中で最も形態的に均一な種の一つとなっている • 遺伝学的研究により、T. compactum におけるコンパクトな穂の形質は、主に穂軸の節間伸長を調節する 2D 染色体上の C 遺伝子座によって制御されていることが明らかになっている • 米国北西部では、アジア向けの麺類・菓子製造を主目的とした軟白小麦の輸出市場向けに、現在でも相当な面積でクラブコムギ品種が生産されている
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