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ヒメツボスミレ

ヒメツボスミレ

Tofieldia pusilla

ヒメツボスミレ(Tofieldia pusilla)は、ツボスミレ科に属する小型で耐寒性のある多年草です。スコットランドのアスフォデルまたはキングス・ノットとしても知られています。この微小な高山植物は、過酷で寒冷な環境におけるその強靭さと、短い高山の夏の間に密な総状花序で咲く繊細な星形の花で有名です。

• 北半球の極域および高山帯に広く分布する周極種
• 世界で最も耐寒性の高い flowering plants(被子植物)の一つ
• イギリスの植物学者トーマス・トフィールド(1730–1779)にちなんで命名された
• 草丈は通常 5〜20cm と小さいものの、高山帯および極域の植物相を構成する印象的な存在である

分類

Plantae
Tracheophyta
Liliopsida
Alismatales
Tofieldiaceae
Tofieldia
Species Tofieldia pusilla
ヒメツボスミレ(Tofieldia pusilla)は周極分布を示し、ヨーロッパ、アジア、北アメリカの極域および亜極域に自生しています。

• スカンディナビア、スコットランド、アイスランド、グリーンランド、北ロシア、アルプス山脈、ならびにカナダやアラスカの一部など、高山帯および極域が原産
• ツボスミレ属(Tofieldia)には約 15〜20 種が含まれ、多様性の中心は東アジア(特に日本と中国)にある
• Tofieldia pusilla は同属内で最も広く分布する種である
• ツボスミレ科(Tofieldiaceae)は歴史的にユリ科(Liliaceae)に分類されていたが、20 世紀後半の分子系統学的研究に基づき再分類された
• 化石記録および生物地理学的証拠から、同属は東アジアに起源し、氷河期に北上および西へ分散したと考えられている
ヒメツボスミレは小型で細く、根茎を持つ多年草です。

根茎と根:
• 短く這う根茎を持ち、ひげ根を出す
• 岩場や礫地において小さく密な株を形成する

茎と葉:
• 花茎は直立し細く、高さ 5〜20cm。しばしばわずかにざらついた触感(粗面)がある
• 葉は主に根生し、線形〜狭い披針形で、長さ 3〜10cm、幅 2〜5mm
• 葉身は平らかわずかに溝があり、縁は全縁、脈は平行脈でユリ科植物を思わせる
• 花茎の下部にごく少数の小さな茎葉( cauline leaves)が存在することもある

花序と花:
• 花は密な頂生する総状花序(しばしば頭状に見える)に付き、長さ 1〜4cm
• 個々の花は小型(直径約 4〜6mm)で、6 枚の花被片を持ち、色は白色〜淡緑がかった白色
• 6 本の雄しべを持ち、花糸は短い。子房は上位
• 花は両性花で、主に昆虫によって受粉される

果実と種子:
• 果実は小型の卵形〜楕円形の蒴果(長さ約 4〜5mm)
• 蒴果は室背裂開(各心皮の背縫線に沿って裂開)する
• 種子は小型で細い楕円形をしており、一端に尾状の付属物(尾状突起)を持ち、風による散布を助ける
ヒメツボスミレは、被子植物が生息しうる最も過酷な環境の一つで生育します。

生育地:
• 高山帯および極域の草原、岩礫地、砂礫地
• 雪解け水の流れる渓流の近くや、雪が長く残る場所に見られる、湿潤〜湿った石灰質土壌を好む
• 極域では海面レベルから、高山帯では標高 2,500m を超える範囲に生育する
• ユキノシタ属(Saxifraga)、ナデシコ科のクッション状植物(Silene acaulis)、各種スゲ属(Carex spp.)など、他の耐寒性種と共に見られることが多い

気候と適応:
• 極めて耐寒性が強く、氷点下 30℃を大きく下回る温度にも耐える
• 短い生育期間(極域では 6〜10 週間程度)に適応している
• 高山帯では日向〜半日陰を好む
• 生育期間中は常に湿った土壌を必要とするが、痩せて栄養分の少ない土壌にも耐える

受粉と繁殖:
• 花は小型のハエ類(双翅目)やその他の一般主義的な送粉者によって訪れる
• 送粉者が不足しがちな過酷な環境における繁殖保証の仕組みとして、自家受粉も可能
• 種子は、尾状の付属物(尾状突起)の助けにより風によって散布される
ヒメツボスミレ(Tofieldia pusilla)は世界的には絶滅の危機にはありませんが、生育環境の特異性や気候変動の影響により、地域によっては個体群が脆弱となっています。

• IUCN レッドリストでは、世界的には「低懸念種(LC)」に分類されている
• しかしながら、分布域の南縁部(アルプス山脈やスコットランドなど)の個体群は、局所的に希少であり潜在的に脆弱であると考えられている
• イギリスでは、Tofieldia pusilla はスコットランド高地の限られた数箇所にのみ生育する希少種であり、野生生物保護法によって保護されている
• 主な脅威としては、過放牧による生育地の喪失、高山帯におけるインフラ開発、そして高山帯および極域の生育可能域を縮小させる気候変動に起因する温暖化が挙げられる
• 高山植物相への気候変動の影響を示す指標として、分布域の周縁部にある個体群の長期的なモニタリングが推奨されている
ヒメツボスミレは、その特異な生育環境の要求のため一般的な園芸植物ではありませんが、専門的な園芸家によってロックガーデンや高山植物用温室で栽培されることがあります。

日照:
• 日向〜半日陰。自然の高山環境を模した、開けた日当たりの良い場所が最もよく育つ

用土:
• 湿り気があり水はけの良い石灰質(石灰分を豊富に含む)土壌を必要とする
• 推奨される用土:荒目の砂質壌土に、石灰岩の砕石やチョークを混合したもの
• 粘質の強い土壌や過湿な状態は苦手とする

水やり:
• 生育期(春〜初夏)は用土を常に湿った状態に保つ
• 冬季の休眠期は水やりを減らすただし、根茎が完全に乾燥しないようにする

温度:
• 極めて耐寒性が強く、適切な休眠と開花のために冬季の低温期間を必要とする
• 高温多湿な夏は苦手とし、冷涼な温帯〜亜寒帯気候に最も適する
• USDA ハーディネスゾーン:2〜6

増やし方:
• 実生:秋に新しい種子を冷床に播種する。発芽には時間を要し、不均一になりがち
• 株分け:春先に生育した株を注意深く分ける。ただし、根を切られることを嫌う

主なトラブル:
• 開花しない → 冬季の低温不足、または用土が肥沃すぎるため
• 根茎が腐る → 水はけ不良、または冬季の過湿が原因
• 狭い生態学的要件のため、自生地以外での定着は困難である

豆知識

ヒメツボスミレは、後退する氷河の縁や、真夏まで雪が残るような場所で生育する数少ない被子植物の一つです。 • 極めて希少なスコットランドでは「スコティッシュ・アスフォデル」とも呼ばれ、18 世紀の発見以来、植物学者の関心を集めてきた • 雪解けからわずか数週間のうちに開花し結実するその能力は、短い極域および高山の生育期間への驚くべき適応である • Tofieldia pusilla は 200 年以上にわたりユリ科(Liliaceae)に分類されていたが、DNA 証拠により独立したツボスミレ科(Tofieldiaceae)へ再分類された。これは、よく研究された植物でさえも分類学上の驚きを抱えていることを示す好例である • 属名のトフィールドは、18 世紀のイギリスの植物学者であり聖職者でもあったトーマス・トフィールドにちなみ、彼はイギリス植物相の初期研究に貢献した • 北ヨーロッパの一部の伝承的な民間慣習では、この植物は悪霊からの守りと関連付けられていた。これはおそらく、一見生育不可能なような、風吹きつける山岳環境で繁茂するその能力によるものであろう

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